- 多くの英語学習者が注目する「音読」は、本当に効果的でしょうか?
- この記事では、私の長文音読の取り組みをお話しします。
- 音読に使っているテキスト、『現代ビジネス英語』の特徴もお伝えします。
私が音読を大切にする理由
音読は王道
これは有名な本です。「同時通訳の神様」と言われた國弘正雄先生の著書です。
このなかに、音読を中心とした英語学習は王道であると書かれています。
文法を理解する学習(頭脳を使う)と、音読を反復する学習(身体を使う)は車の両輪の関係だと思います。どちらに偏っても、いずれ壁にぶつかります。
インプットの時代
私がTOEICに取り組んだ時代の学習は、今より口や手を動かすことが少なかったです。
TOEIC(LR)に特化した勉強は、私の場合はインプット(リスニング・リーディング)中心の学習になりがちでした。
音読の大切さは知っていました。しかし、腰を据えて取り組む時間はありませんでした。
TOEIC を卒業して英会話スクールに通うようになり、アウトプットの大切さに気づきました。
音読と英作文の開始
英会話を本格的にやりたい人にとって、音読と英作文は基礎になります。
時間的余裕ができたとき、私は重たい腰を上げて音読を始めようと思いました。
音読に使うために私が選んだ教材は、NHK講座「実践ビジネス英語」でした。それは、現在は季刊の「杉田敏の現代ビジネス英語」へと名前が変わっています。内容のコンセプトは変化していません。
私の音読体験
音読教材の紹介
音声DL BOOK 杉田敏の 現代ビジネス英語 2021年 秋号
音声DL BOOK 杉田敏の 現代ビジネス英語 2022年 冬号
文法や語彙のレベルを見ていきましょう。
Culture of “Love and Profit” というレッスンには、以下の文があります。 音読に使うには、わりと長い文です。
Some people see charity as a religious or moral obligation, regardless of their personal economic circumstances. But for some, giving is a luxury rather than a necessity, and it can be put on hold when times get tough.
現代ビジネス英語2021年夏号
訳 人によっては、個人的な経済状況にかかわらず、慈善活動を宗教的または道徳的な義務と考える人もいます。しかし、中には寄付が必需品というよりも贅沢品であり、厳しい状況になると寄付を中断してしまう人もいます。
The Office of the Future というレッスンには、以下の文があります。パンデミックによるリモートワークがテーマです。ニュースに出てきそうな文章です。
The pandemic has already pushed millions of people to work from home. Americans have adopted a new outlook on remote work and don’t want to go back to the old ways.
現代ビジネス英語2021年夏号
訳 パンデミックの影響で、すでに何百万人もの人々が自宅で仕事をするようになっています。アメリカ人はリモートワークに対する新しい考え方を取り入れており、昔のやり方には戻りたくないと考えています。
この教材の特徴を整理すると、次のようになります。
【内容】社会を学べる話題
ビジネス英語という言葉から、仕事上の会話を想像する人がいると思います。
しかし中身は、ビジネスパースンが現代社会の時事的な話題を自由に語る内容です。
NHK出版のページは、こう説明しています。
NHKラジオ「実践ビジネス英語」に続く、杉田敏の新シリーズ!新たに書き下ろした最先端のビジネスを取り上げたビニェットで、本物の英語力がつく、最強の1冊です(音声ダウンロードつき)。
NHK出版
季刊になっても狙いは変わりません。英語で雑談できるビジネスパーソンになっていただけるよう世界で話題のコンテンツを提供してゆきます。
各レッスンはどれも現代の多様な話題を取り扱っています。テーマごとに関連語彙を覚えられます。
語学学習テキストとしての完成度が高いだけではなく、書かれている内容から有用な時事的知識を得られます。
【音声】無料でダウンロード
スクリプトの音声はNHK出版サイトからダウンロードします。スマホ・タブレット・パソコンで聞けます。
テキストにパスコードが記載されています。それをNHK出版のサイトに登録すれば、ダウンロードできます。
複数の外国人の英語に触れることができます。
【構成】1冊で4レッスン
一冊のテキストには4つのレッスンが入っています。
一つのレッスンは、1~5個目までがビニェットと呼ばれる英文スクリプトで、最後の部分がクイズになっています。
各ビニェットには語句の解説もついています。辞書を引く必要はありません。Word Watch というコーナーでは、とくに注目すべきキーワードの解説が載っていて、私はこの部分を読むのが楽しく感じます。
【レベル】NHK英語では最難関
NHK英語では最高峰です。TOEICが900を超えても、知らない語彙は出てくるはずです。
初心者がいきなりこの教材に取り組むのは、避けましょう。
NHK出版サイト
NHKの語学テキストの質は高く、安心して取り組めます。
興味のあるあなたは、NHK出版のページを覗いてみてください。
私の音読法
まず、語句の解説を見ながら精読します。そのあとは、同じスクリプトのリスニングと音読を繰り返します。それだけのシンプルな方法です。
その日その日の体調や気力に応じて、音読する量は調整します。質の重視を念頭に置いてやっています。
読んだ回数は、記録をつけています。数がたまってくると自信が湧いてきます。
音読で弱点を発見できます。意味を理解しながら音読して、ひっかかる部分が弱点です。立ち止まらず、全部スラスラ読めれば合格です。
「ひっかかる」場合、これは以下の3つに分けられます。
- 語彙の知識がなく意味がつかめなくなる
- 文法がわからず意味がつかめなくなる
- 発音に自信が持てない
こういう部分に突き当たると、スピードが落ちます。また、自信がないので声も小さくなりがちです。
弱点を見つけたら、テキストの日本語訳や解説の部分を読み返し、音声を聴いて確認します。
「音読する→ひっかかる部分に突き当たる→調べる、またはリスニングする→音読を続ける」というサイクルを繰り返していくと、じきに全文スラスラ読める日がやってきます。
長文音読で伸びるもの
会話で使える言葉
何度も繰り返し音読した英文は、スピーキングでも口に出てきやすいです。体に沁み込んでいくのでしょう。
音読で覚えた語彙は、「知っている語彙」を超えて、「使える語彙」に昇格していることが多いです。
音読はさぼると滑らかに発声できなくなります。継続が大切だと思います。
しかし、気が乗らない日や、調子が出ない日も当然出てきます。続けていくコツは、量を減らしてでも読むことです。
聴く耳の感度
音読を継続すると、なぜか英語の聞こえ方も違ってきます。個人差もあると思いますが、数か月程度続ければ実感できると思います。
ある日、ニュースで聞いた外国人のスピーチが自然につかめる。YouTubeで聞いた英語がよくわかる。そんな時が訪れます。
自分で発音できること、他人の発音が聞き取れること、この二つは脳内で密接につながっているようです。自分で発声するとリスニング力は上昇しました。
語彙のつながり
一つのテーマに沿った長文を読むことで、関連語彙が一気に覚えられます。音読だと自然と発音にも気をつけるようになります。
単語帳でバラバラに覚えるのとは違い、文脈の中でコロケーションも同時に身につけられます。コロケーションとは語と語のナチュラルな結びつきのことを言います。
語順通りの把握
音読をするときは返り読みをせずに、英語の語順で文を扱います。
日本語と英語とでは語順がかなり違います。英語らしい語の配列に慣れる必要があります。
それは、リスニングやスピーキングのスピードアップにも非常に有効です。
話の流れの理解
人によっては、短文音読のほうがよい場合もあると思います。その理由は、長文音読は負荷が大きいためです。
長文音読は少しずつ慣らしていくことが大切です。難易度が高すぎるなら、易しめの教材に変えましょう。
習慣化しないうちは、挫折率も高くなると思います。
長文音読のメリットは、物語性・論理展開を把握する力がつくこと、長文に対する苦手意識の克服などです。
脳の活動力
音読に慣れてしまうと、目で文字を追うだけでは薄っぺらい感じがしてきます。
音読により、しっかりとした経験が自分の中に蓄積される感覚が生じます。
脳科学的には、より面倒な方法を取ったほうが、脳をよく働らかせることができるそうです。
音読により大脳の7 割以上の神経細胞が働くそうです。脳トレに最適な方法の一つと言われています。
たしかに、長文の音読を十分にした後は、発想が豊かになり生産性が上がることがあります。それだけ、脳の働きが活発になっているのだと思います。
ただし、やりすぎると疲れてしまうので注意が必要です。
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まとめ
音読という学習法は、かなりおすすめです。
正直に言うと、私は音読を始めるまでは声に出すのが面倒でした。
音読の良さは知っていたので、チャレンジしてみましたが習慣化は困難でした。
まず習慣化するまでがひとつの山場です。軌道に乗ると楽しくなり、効果も出てきます。
最後に、「現代ビジネス英語」の前身「実践ビジネス英語」のベスト集が2冊出ていますので、ご紹介しておきます。杉田敏先生の世界を、思う存分楽しめる内容です。
実践ビジネス英語 ニューヨークシリーズ The Final Chapter ベストセレクション完結編