今回のテーマ:比喩
- Time is money や as white as snow など、英語にも比喩表現があります。
- 今回は英語の慣用的な比喩表現の基本を解説します。
- 気に入ったら会話で使いましょう! 楽しさが倍増します。
英語の比喩表現とは
比喩表現のメリット
英語はいつも素直な言い方をするとはかぎりません。多様で面白い表現技法があります。
ものごとを何かにたとえる比喩表現もその一つです。
比喩表現を適切に使えば、言いたいことをわかりやすく伝え、印象づけられます。
また、短い具体的な表現のなかに深遠な意味を込めることも可能です。
とりわけ、英詩などの文学の世界では、比喩や象徴がよく用いられます。
また、ことわざでも身近なものにたとえて深い意味を表します。
明喩と暗喩
比喩の代表的なものに明喩(similes)と暗喩(metaphors)があります。
●明喩は英語の場合、like や as を使って表されます。
like
I’m so happy that I feel like a star.
訳 スターになったような気分でとても嬉しい。
He was learning like a sponge.
訳 彼はスポンジのように吸収して学んでいた。
This animal breeds just like rabbits.
訳 この動物はウサギとまったく同じように多産です。
The audience gathered like bees to a honeypot.
訳 観客は蜜壺に集まる蜂のように集まった。
as
Please sing the song loudly as Elvis did.
訳 エルヴィスみたいに大きな声で歌ってください。
He devoted himself to his work as if it were his mission.
訳 彼はまるで自分の使命のように仕事に打ち込んだ。
その他
I prefer to use this U-shaped neck pillow on an aeroplane.
His handwriting is a little childish but sincere.
訳 私は飛行機でこのU字形のネックピローを使うのが好きだ。
訳 彼の字は少し幼稚だが、誠実である。
これらは like や as を使っていませんが、意味的には同様の表現ですね。
●暗喩は like や as を使わずに表されます。
You’re on fire.
訳 調子がいいね。
When it comes to investing, Mary is in the dark.
訳 投資に関しては、メアリーは何も知らない。
I must say she is a phoenix.
訳 彼女はフェニックス(神話の鳥)だと言わざるをえません。
I was interested in the umbrella bush near the entrance.
訳 私は入り口近くの傘状に枝を広げた木に興味を持った。
She is a multi-talented woman who wears many hats.
訳 彼女は多才な女性であり、多くの役割を担っている。
英語には、日本人と発想が違う比喩表現もあります。
また、日本の例えをそのまま英訳しても通じないケースもあります。なかなか難しい問題です。
比喩の表し方は文化に根付いている側面があります。
その国の人がよく見かけるものや、宗教的背景、固有の寓話にもとづくことがあるからです。
そこらへんの事情を考察した記事もあります。
比喩表現と慣用句
比喩は語り手が自由に作り出せます。また、慣用句(イディオム)化した言い方もあります。
慣用句と比喩表現は関連性が高いです。時代とともに新しい慣用句が生まれます。
比喩・象徴以外の技法
次の記事は、比喩以外の英語表現のテクニックが味わえる内容です。
由来別の比喩の例文
動物が由来
これから、慣用的に使われる比喩表現を見ていきます。
人の性質を表す
He is waiting over there. He is an early bird.
訳 彼は向こうで待っています。彼は定刻より早く来る人です。
early bird は「早起きの人、定刻より前に来る人」。
rare bird は「珍しい人・もの、変わり種」の意味です。
He gets drunk easily, but she drinks like a fish.
訳 彼はすぐに酔いますが、彼女は大酒飲みです。
drink like a fish は「大酒飲み」「ザル」。
日本語のザルは「お酒をいくら注いでも溜まらない」ところから来ています。
A talented performance. You’re a beast!
訳 才能あふれる演技。君はめっちゃいい!
beast は「野獣、いやなやつ」ですが、スラングで「優れている人」を表します。
He is famous as a literary lion.
訳 彼は文豪として有名です。
literary lion は「文豪」。
I saw an eagle-eyed policeman standing in front of the gate.
訳 門の前に、目つきの鋭い警官が立っているのを見た。
eagle-eyed は「細かいことも見逃さない」。
She made catty remarks about her sister.
訳 彼女は妹に意地悪な発言をした。
catty は「猫のような、意地悪な」。
He is as sly as a fox. Don’t be taken in by his words.
訳 彼は狐のようにずるい。彼の言葉に騙されないで。
as sly as a fox は「狐のようにずるい」。
I worry about him because he is as innocent as a lamb.
訳 彼は子羊のように純粋無垢なので、私は心配しています。
as innocent as a lamb は「子羊のように純粋無垢」。
ものごとの様子を表す
It is likely to rain cats and dogs.
訳 どしゃ降りになりそうです。
cats が大雨、dogs が強風を招き寄せる迷信があるそうです。
The teacher looked as busy as a bee every day.
訳 先生は、毎日とても忙しそうに見えました。
as busy as a bee は「蜂のように忙しい」。
He quit a job to get away from the rat race.
訳 彼は出世競争から逃れるために、仕事を辞めた。
rat race は「猛烈な出世競争」。
食べ物が由来
ポジティブか中立的
Leave it to me. It’s a piece of cake.
訳 任せなさい。それは朝飯前だ。
piece of cake は「簡単にできること」。as easy as pie とも言います。
Although the earthquake occurred, I was as cool as cucumber.
訳 地震が起きましたが、私はとても冷静でした。
as cool as cucumber は「落ち着きを払っている」。cucumber は「キュウリ」。
It is said that America is a salad bowl.
訳 アメリカはサラダボウルだそうです。
salad bowl は「多様な民族・人種が共存している様子」。
ネガティブ
The rotten apple injures its neighbors.
訳 腐ったリンゴは仲間を腐らせる。
rotten apple は「(周囲に悪影響を及ぼす)困り者」。
If you betray me, I’ll go bananas.
訳 私を裏切るなら、激怒します。
go bananas は「怒り狂う」。go nuts とも言います。
You need to choose a car carefully not to buy a lemon.
訳 欠陥品を買わないように、注意深く車を選ぶ必要があります。
buy a lemon は「欠陥品を買う」。
He is always buttering up the boss.
訳 彼はいつも上司にへつらっている。
butter up は「お世辞を言う」。butter は「バター」。
物体が由来
ポジティブ
The metaphor adds spice to the sentence.
訳 その比喩により文が面白くなる。
add spice が「面白味を添える」の意味になっています。
This is a good icebreaker topic for a formal conversation.
訳 これは、フォーマルな会話のためのよい和みの話題だ。
icebreaker は「堅苦しい雰囲気をほぐすもの」。「氷を砕くもの」がもとの意味。
I don’t think this is the yellow brick road.
訳 これが黄色いレンガの道だとは思わない。
黄色いレンガの道とは、童話の The Wizard of Oz でオズの都につづく道のこと。出世街道。
エルトン・ジョンの楽曲は Goodbye Yellow Brick Road。「黄昏のレンガ路」とも訳されます。
ネガティブ
He was called a wet blanket when he pointed out Tom’s minor failure.
訳 トムの些細な失敗を指摘したとき、彼はしらけさせる人だと言われた。
wet blanket は「座をしらけさせる人」。火を消す濡れ毛布のことです。
日本語でも「水を差す」と言います。
They seemed to keep quiet about the skeleton in the closet.
訳 彼らは内輪の秘密にかんして口をつぐんでいるようだった。
skeleton in the closet は「押し入れのなかに隠された骸骨」。内輪の秘密のことを指します。
The receptionist gave her the cold shoulder for no apparent reason.
訳 受付の女性は、理由もなく彼女を冷たくあしらった。
give someone the cold shoulder は「冷遇する」。
由来については、「羊の冷たい肩肉のかたまり」など諸説あるようです。
時間帯が由来
始まり
We have finally reached the dawn of the artificial intelligence era.
訳 私たちはついに人工知能時代の幕開けを迎えた。
dawn は「夜明け」ですが、「画期的なことの始まり」のたとえに使われます。
終わり
The government should take measures for twilight industries.
訳 政府は斜陽産業への対策を講じるべきだ。
twilight は「薄明り、たそがれ」。「衰退期」も表します。
斜陽産業とは衰退している産業のこと。
スポーツが由来
野球が由来
Touch base with me when you are in trouble.
訳 困ったときは連絡をください。
touch base は「連絡をする」。
I have to admit he has two strikes against him.
訳 彼が不利な状況にあることを、認めなければなりません。
have two strikes against someone は「不利な状況にある」。
Give me a ballpark figure, please.
訳 おおよその数字を教えてください。
ballpark figure は「概算」。
野球のボールはどれだけ飛んでも野球場の広さに収まるところから来ているそうです。
他の運動が由来
Your assignment is not a walk in the park.
訳 あなたの課題は、たやすいことではありません。
a walk in the park は「誰でもできる簡単なこと」。
Don’t jump the gun. Be calm.
訳 早まった行動をするな。冷静になれ。
jump the gun は「フライングをする、早まった行動をする」。
「フライング」は和製英語です。
I’ll finish the work soon. I’m in the home stretch.
訳 すぐに仕事を終えます。最終段階に入っています。
in the home stretch は「最終段階にいる」。
That’s par for the course with Japanese.
訳 それは日本人には普通のことです。
par for the course はゴルフ用語から来ていて、「あたりまえのこと」。
What is the mayor’s game plan?
訳 市長の作戦は何?
game plan はフットボールなどの作戦計画から「作戦」。
We have a fighting chance to get over it.
訳 私たちには、それを乗り越えるチャンスがあります。
fighting chance は「かすかな成功の見込み」。
感情を表す比喩
ここでは応用編として、人間の感情を表す慣用的な英語の比喩を見ていきます。
天気・自然物・生き物・色彩など、感情を喩えるものがたくさんあります。
文化が違っても、内容をイメージしやすいものを集めました。
例文で表現の面白さを味わってください。
明るさ・喜び
Her sunny smile makes us happy.
訳 彼女の陽気な笑顔は、私たちを幸せにします。
sunny smile は「太陽のような笑顔」。
He talked about the journey with his eyes shining.
訳 彼は目を輝かせながら、旅について話しました。
eyes shine は「目が輝く」。
When she was informed of the news, her face lit up.
訳 彼女がそのニュースを知らされたとき、彼女の顔が明るくなった。
face lights up は「顔が明るくなる」。
Every cloud has a silver lining.
訳 困難な状況にも希望の光がある。
ことわざです。silver lining は「雲の明るい縁」のこと。
The babbling stream is music to my ears.
訳 小川のせせらぎが耳に心地よい。
music to someone’s ears で「誰々の耳に心地よい」。
落胆・心配
He read the letter and his expression darkened immediately.
訳 彼は手紙を読み、彼の表情はすぐに暗くなった。
expression darkens は「表情が暗くなる」。
She was weighed down by a heavy cloud over her head.
訳 彼女の頭上には、重い雲が覆っていた。
cloud over her head は「頭上を覆う憂鬱な感情」。
If you had no weight on your shoulders, your view would change.
訳 もし肩の荷が下りたなら、見方も変わだろう。
weight on your shoulders は、「重荷になる悲しみや不安」。
He lost his friends. He was in floods of tears.
訳 彼は友達を失った。彼は涙に暮れていた。
in floods of tears は「涙の洪水」。
She comforted her daughter with sadness, mending her broken heart.
訳 彼女は悲しむ娘を慰め、傷ついた心を癒した。
broken heart は「悲しみなどで傷ついた心」。
怒り・決意
He suddenly got out of the room after a heated discussion.
訳 彼は白熱した議論のあとで、突然部屋を出ました。
heated discussion で「白熱した議論」。
It is like a boiling pot on the verge of overflow.
訳 まるであふれ出す寸前の沸騰した鍋のようだ。
boiling pot は「今にもあふれ出しそうな熱い感情」。
Their tempers flared at the meeting but I kept silent.
訳 会議で彼らの怒りは燃え上がりましたが、私は沈黙を守りました。
tempers flare は「怒りが燃え上がる」。
combustion「燃焼」という単語も、「怒り」の意味を持っています。
His determination was a fire in his belly, so nobody could move him.
訳 彼の決意は腹の中の火だったから、誰も彼を動かすことはできなかった。
fire in his belly は「心の中で燃え上がっているもの」。
恋愛
恋愛に関する英語でも、比喩は出てきがちです。
You are my Romeo/Juliet.
訳 あなたは私のロミオ/ジュリエット。
シェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」からきている表現です。
You are the sunshine of my life.
訳 あなたは私の人生の太陽です。
I have got a crush on you.
訳 私はあなたに首ったけです。
crush は「押しつぶされていること」。恋や片思いを表すこともあります。
I’m under your spell.
訳 私はあなたの呪文にかかっているの。
Love is blind.
訳 恋は盲目。(恋におちると理性や常識を失う)
ことわざです。シェイクスピアの『ヴェニスの商人』のなかに出てきます。
「恋は盲目で、恋人たちは自分たちがいかに愚かなことをしているかわからないものなのね」。
ちなみに、blind は差別語とみなす人もいます。代わりの表現は visually impaired です。
My heart overflows with gratitude.
訳 私は感謝の気持ちで満ちあふれています。
感情(愛、親切、悲しみなど)が「容器の中の水」に喩えられる例の一つ。
My teacher is going to tie the knot with a man from Scotland.
訳 私の先生はスコットランド出身の男性と結婚する予定です。
tie the knot は「結び目を作る」から、「結婚する」の意味。
その他
He fell and his cheeks were burning with embarrassment.
訳 彼は転び、頬は恥ずかしさで火照っていた。
cheeks burn は「頬が火照る」。
Please soothe butterflies in your stomach and calm down.
訳 どうか胃の中の蝶々を鎮めて、落ち着いてください。
butterflies in your stomach は「興奮や心配でドキドキする心」。
butterfly in tummy なども同様の表現。
The chief soldier had a heart of stone, so he didn’t answer.
訳 兵士長は石の心を持っていたので、返答を控えた。
heart of stone は「石のような冷酷非情な心」。
今年(2023年)のスパイ・アクション映画のタイトルになっています。
I was petrified by her cosplay at the Halloween party.
訳 ハロウィーン・パーティーでの彼女のコスプレには茫然とした。
petrify はもともと「石化する」。そこから「恐怖で動けなくする」の意味が生じます。
色彩と感情
色彩は、感情との結びつきが強いです。色の違いにより、異なる感情やイメージが湧きます。
This picture makes me blue.
訳 この写真を見ると、気が滅入る。
blue は「気分が落ち込む」。
She saw red at the naughty cat.
訳 いたずらな猫に彼女は激怒した。
see red は「激怒する」。
At that time, you were as green as grass.
訳 あの時、あなたは青二才だった。
as green as grass は「未熟な」。
I want to say, but the green light has not been given.
訳 言いたいのですが、許可が下りていません。
green light は「青信号」「ゴーサイン」。
It seems to me that he is seeing pink elephants.
訳 彼は幻覚を見ているようです。
see pink elephants は「幻覚を見る」。
I no longer use black humor in public.
訳 もう人前でブラックユーモアは使わない。
black humour は「風刺や皮肉を超えた、たちのわるいユーモア」。
He used to be a grey character, but now he is positive.
訳 彼は以前は陰気な性格だったが、今は前向きだ。
grey character は「陰気な性格」。
I want to make my name white again.
訳 私は汚名をすすぎたい。
make one’s name white は「汚名をすすぐ」。
豆知識
「勝ち負け」を表す表現。
top dog
意味 勝者、最重要人物
underdog は「負け犬」のこと。
top dog も underdog も人間に対して使います。
burn は「燃やす」だけど…
burn は、スラング的に使うと「誰かの悪口を言う」の意味。
力を緩める。
loosen up は「くつろぐ・打ち解ける」。
緊張を緩めるイメージです。
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まとめ
英語の比喩表現も、身近なものや寓話などを起源とすることがあります。
会話で効果的に使えれば、面白みが増すでしょう。
ここにあげたものの他にも無数の比喩表現があります。
さらに勉強したいあなたのために、日本語と英語に共通の比喩表現を満載したユニークな辞典があります。日英語の比喩を750組、見開き対照で学べます。著者は言語の専門家です。
日英共通メタファー辞典 ―A Bilingual Dictionary of English and Japanese Metaphors