今回のテーマ:英語らしい文章表現
- 長い英文を書くときに、上手に見せるために何かコツはあるでしょうか?
- この記事では、知的な長文の英作文で使える基本テクニックを例文を挙げて解説します。
- 英作文の場合、文章をゆっくり見直すこともできます。技法を積極的に使いましょう。
長文の英作文を洗練する

語彙力だけでいいのか
大人らしい英文を書くには、どうしたらいいでしょう?
英作文では、単語やイディオムなどの語彙力が注目されがちです。
確かに語彙力は基本として、とても大切なものです。
しかし、実用的な場面では、表現の仕方だけでなく、構成や内容も問われます。
作文のテクニック
文章表現には、上手に書くテクニックと言われるものがあります。
この記事では、ある程度フォーマルで知的な文章の英作文で役立つ技法を考えます。
この記事の見出し | 簡潔性 | 精緻化 | 論理性 | 対話調 | |
1 | 整理された構造 | ◎ | ◎ | △ | |
2 | and や but(等位接続詞) | × | ◎ | ||
3 | because(従位接続詞) | × | ○ | ◎ | |
4 | 同義/類義表現による言い換え | ○ | |||
5 | 無生物主語のSVO表現 | ◎ | ○ | ||
6 | 疑問文で問題を提起 | ◎ | |||
7 | 印象的な比喩表現の使用 | ○ | ○ | ◎ | |
8 | 同格による詳しい説明 | × | ◎ | △ | |
9 | 文末に分詞構文を追加 | × | ◎ | ○ | × |
10 | 文末に関係詞節を追加 | × | ◎ | × |
一長一短があるので、文脈やスタイルに合わせて自分で選んで使いましょう。
なお、簡潔性(削り方)にかんしては、次の記事で詳しく述べています。
まず覚える初級編
整理された構造
例1
I am reaching out to send a quick reminder that the deadline for your manyuscript for the Monthly Report is approaching on January 20th. If you have any questions, need additional time, or are experiencing any difficulties, please let me know as soon as possible. I look forward to receiving your submission.
訳 月例報告書の原稿の締め切りが1月20日に迫っていることをお知らせするためにご連絡しました。ご不明な点、お時間が必要な場合、または何か問題がある場合は、できるだけ早くお知らせください。ご投稿をお待ちしております。
語彙力のようなミクロな視点だけでなく、文や文どうしののつながりを考えましょう。
この例は原稿を投稿してもらうようにお願いする定型的な内容です。
以下の3つの要素から成り立っています。
初めの文でメールの目的を明確に述べています。(主となる用件)
次の文で何か連絡がある場合は、至急伝えてくださいと言っています。(副次的な情報)
最後に原稿の受け取りを楽しみにしていることを伝えます。(結び)
このように、慣習的に一定のフォーマットが存在する文章があります。
英語では、とくにビジネスやニュースではなおさら、重要な情報を前に置きます。
例2
Oak, maple and teak are examples of woods that are highly wear resistant and suitable for flooring. Oak is hard and popular in Europe and North America. Maple is light and American maple goes to Japan. Teak is water resistant and can withstand wet conditions.
訳 オーク・メープル・チークは、耐摩耗性が高くフローリングに適した木材の例です。オークは硬く、ヨーロッパや北米で使われています。メープルは色が薄く、アメリカ産のメープルは日本にも輸出されています。チークは耐水性があり、湿気のある条件にも耐えます。
この例は、初めの文章でフローリングに適した木材の種類をまとめて述べています。
次の3文は、初めの文で取り上げられた木材を、ひとつずつ具体的に説明しています。
説明の順番は、重要度順であったり、時系列的であったり、何らかの秩序があるのがふつうです。
このように、まとめの文から部分を明細化していく構造を意識して書きます。
具体例のあげ方を、解説した記事です。
and や but(等位接続詞)
例1
In the end, I found that deep thinking in writing my own book extended to periods before, during, and after the creation of a manuscript. Slow and steady thinking seems to be the basis for writing a book.
訳 結局、自著を書くときに深く思考することは、原稿を書く前、書いている最中、そして書いた後にも及んでいることがわかった。ゆっくり着実に考えることが著作のベースにあるようだ。
長文ライティングでは、接続詞の使い方をマスターすることが必須です。
接続詞は、部分と部分の論理関係を意識して、それを明示するために必要な箇所で使いましょう。
先に整理された構造の話をしましたが、これも論理的な「構造」にかかわる話ですね。
長文ではとくに、and などの等位接続詞で語句をつなぐ表現が使われます。
and は、いろんなものをつなげられます。
この例文は、3つの前置詞をつなぎ、slow and steady という韻を踏んだ表現も使っています。
文の内容によっては、when and where など、疑問詞もつなげられます。
or を使って、たとえば、five or six people「5人か6人」などの言い方もできます。
等位接続詞の場合、つなげる語のリズムや語数を合わせるのもテクニックのひとつです。
例2
England prospered as the “Factory of the World”. Capitalists gained status and wealth, but it also brought a population focus on urban areas and problems of poverty and crime. Capitalists and workers at times clashed over wages and working conditions.
訳 イギリスは「世界の工場」として繁栄した。資本家は地位と富を得たが、同時に都市部への人口集中、貧困や犯罪の問題ももたらした。賃金や労働条件をめぐる資本家と労働者の衝突もあった。
この例では、産業革命の光と影の部分を述べるのに but が使われています。
ものごとの良い面と悪い面について言及することで、冷静に事実をふまえた議論になります。
but という等位接続詞も、いろいろなものをつなげられます。
形容詞をつなぐ場合は、以下のようになります。
an expensive but reliable dictionary「高価だが信頼できる辞書」
usually boring, but sometimes amusing「いつもは退屈だが、ときどき面白い」
not only ~ but also ~ の形はとても有用で、多くの英文で頻出します。
慣用的な並列表現を解説した記事はこちらです。
because(従位接続詞)
例1
Greek houses are white because they apply lime to the house surface. Lime is abundant on the Mediterranean coast. It prevents the inside of the houses from getting too hot.
訳 ギリシャの家が白いのは、家の表面に石灰が塗られているからです。地中海沿岸には石灰が豊富にあります。それは家の中が暑くなりすぎるのを防ぎます。
例2
Dates are the fleshy fruit of the date palm, native to North Africa. They are healthy because they contain iron and fiber. In Japan, they are known as candied dates. Dr. Kamata, a physician famous throughout Japan, said they were one of the finest foods to eat in daily life.
訳 デーツは、北アフリカ原産のナツメヤシの果肉です。鉄分や食物繊維を含むので、健康に良いです。日本では干しデーツとして知られています。日本全国で有名な医師である鎌田博士が、日常生活で食べると良い優れた食品の一つとしました。
理由を明確に示すことは、説得的または論述的な文脈ではきわめて重要です。
読者の納得感を高めることになります。
従位接続詞では、とくに because が注目に値します。
because は基本中の基本になりますが、他の因果表現もどんどん使いたいものです。
since や as などを用いて理由を示すこともできます。
play a role in, have an effect on なども、すぐ思い浮かぶようにしたいものです。
因果表現を網羅的に解説した記事です。
同義/類義表現による言い換え
例1
The title determines the content of each part. The parts also shape the title, so I sometimes change the title halfway through writing. The big picture and the pieces influence each other.
訳 タイトルによって各パートの内容が決まります。各部分もタイトルを形作るので、書いている途中でタイトルを変えることもあります。全体像と部分は、影響し合っています。
初めの文章は「タイトル」が「部分」を決めるですね。
次の文章は「部分」が「タイトル」を決めるとなっています。
最後の文で前の2文の内容を、簡潔にまとめて言い換えています。
title を big picture、parts を pieces に変えていますね。
同じ語の繰り返しだと、くどくなります。言い換えることを paraphrase と言います。
例2
Infrastructure deterioration is a serious problem in Japan. In particular, structures built during the period of high economic growth (1950s to 1970s) are now aging. An increasing number of bridges, tunnels, water and sewage systems, etc. are more than 50 years old and need inspection.
訳 日本ではインフラの劣化が深刻な問題となっている。特に、高度経済成長期(1950年代から1970年代)に建設された構造物が老朽化している。橋、トンネル、上下水道など、50年以上前に建設され、点検が必要なものが増えている。
この例では、初めの文で全体像を簡潔に述べています。
次の文で、とくに注目すべき部分を取り上げています。
3番目の文では、具体的な構造物の名前を上げて、2番目の文の内容を言い換えています。
冗長さを取り除く方法も、この記事にのっています。
無生物主語のSVO表現
例1
Technological advances caused the Age of Exploration from the 15th to the 17th century. However, the voyages of this era were extremely risky. Textbooks describe only a few successful journeys which discovered new worlds or alternative sea routes.
訳 技術の進歩により、15世紀から17世紀の大航海時代となった。しかし、この時代の航海は極めて危険だった。教科書には、新世界や代替航路を発見して成功した数少ない旅の記述しかない。
例2
Modernist architecture emphasizes functionality and rationality. Postmodernism, on the other hand, incorporates regional, historical, and polysemic characteristics into architecture-what emotions do these architectures evoke in you?
訳 モダニズム建築は、機能性と合理性を重視する。一方、ポストモダニズムは、地域性、歴史性、多義性を建築に取り入れる-これらの建築は、あなたにどのような感情を呼び起こすだろう?
無生物主語のSVOの文を使うだけで、こなれた英文の感じが出てきます。
無生物主語は一種の「原因-結果」の表現にもなります。
とても英語らしい表現です。
日本人はこの言い方に慣れていない人も多いかもしれません。
無生物主語をとる動詞には他にも cause, help, enable, remind など、いろいろあります。
ただし、主語が長すぎると、文の重要な要素である動詞が後のほうに行ってしまいます。
これは、バランスが悪いのでなるべく避けたいものです。
(仮主語や仮目的語の it はこれを防ぐためにあります)
無生物主語を使える動詞に慣れることができる記事です。
もう一つ上の中級編
疑問文で問題を提起
例1
Is urban life physically overcrowded but mentally undercrowded? This looks true. We have to balance this duality. Urban areas have typical problems such as noise pollution and packed trains. Some urban residents feel isolated and long for the rural areas.
訳 都市生活は物理的に過密、精神的に過疎なのだろうか? これは事実のようだ。私たちはこの二面性のバランスを取らなければならない。都市部には騒音公害や満員電車といった典型的な問題がある。都市住民の中には孤立感を感じ、地方に憧れる人もいる。
この例では、初めの文で、疑問形で都市生活について問題提起をしています。
physically overcrowded と mentally undercrowded の語形・語数をそろえた対比があります。
次の文ですぐ解答を示し、それ以降は筆者の意見と具体的説明が続きます。
例2
Arabic numerals are the norm in almost every country. How did they achieve universality? It is not only because of the simple notation, but also because of the positional notation and the notion of zero.
訳 アラビア数字は、ほとんどすべての国で一般的である。なぜ、アラビア数字が普遍性を獲得できたのか? それは単純な表記だけでなく、位置表記法とゼロの概念による。
この例では、初めの文で述べたことについて、2番目の文で疑問を提示しています。
in almost every country を such universality と言い換えていますね。
そして、3番目の文で解答を示しています。
以上2つの例は、初めに疑問文を使うことで、読者の関心を引き、テーマを明確にする技法です。
疑問文を使わない場合でも、文章のテーマは初めに示すようにしましょう。
疑問文の種類は、こちらの記事にまとめてあります。
印象的な比喩表現の使用
例1
If two stones bump into each other, sparks will fly. If at least one side is a soft object, there will be no sparks. This is a human relationship that everyone experiences. Even if one person is angry with the other, the other person’s soft attitude often soothes the anger.
訳 二つの石がぶつかれば火花が散る。少なくとも片方が柔らかければ、火花は散らない。これは誰もが経験する人間関係。片方が怒っていても、相手の柔軟な態度が怒りを和らげることはよくある。
初めの2文は具体的事物を用いた感覚的な比喩になっています。
火花が散る場合と、散らない場合の対比も鮮明になっています。
3文目で、じつはこれは「普遍的な人間関係」であると述べています。
例2
“塔は下から組め” means that when you build a tower, you should assemble it from the bottom up. This Japanese phrase implies that whatever goal you are trying to achieve, hardening the fundamental part is the priority.
訳 「塔は下から組め」とは、塔を建てるときに下から上に組み立てるという意味です。この日本語は、どんな目的を達成するにしても、まず基礎部分を固めることが大切であることを示しています。
この例では、初めに日本語のことわざを提示しています。
次にそれが示唆する抽象的な事柄を述べています。
このようにイメージを喚起するような比喩を使うことで、印象づけの効果を生むことができます。
英語の慣用的な比喩表現は、こちらの記事にまとめました。
同格による詳しい説明
例1
The Dutch were interested in trade rather than conquest or religious conversion, taught about world affairs and technology, and obeyed the rules of the shogunate. This attitude allowed them to trade on Dejima, an island in Nagasaki Bay, during the period of isolation.
訳 オランダ人は征服や改宗より貿易に関心があり、世界情勢や技術を教え、幕府の規則に従いました。この姿勢があったため、鎖国中、長崎湾に浮かぶ出島での貿易を許されていました。
「出島」という日本語を、同格の語句が説明している例です。
同格を使うことにより、聞き慣れない語句の詳細な説明を、簡潔な形で追加することができます。
例2
There are cases that enduring a few more minutes helps us to live a healthy life-one such case is soaking in hot water for another three minutes, especially in winter.
訳 数分長く我慢することで健康的な生活になる場合もあります。その一例は、特に冬場にさらに 3 分間お湯に浸かることです。
この例では、前の文で述べたことを、後の文でより具体的に述べています。
同格の説明により、痒い所に手が届く、親切で丁寧な文章と感じてもらえます。
長文を書くときは、必要な箇所で使っていきたいです。
同格について、さまざまなパターンを取り上げた記事です。
文末に分詞構文を追加
例1
First, the stone materials available in the region served for the architecture. but trade and commerce made it possible to import stone materials from different regions, creating diversity in architecture.
訳 当初は、その地域で手に入る石材が建築に役立った。しかし、交易や商業によって、さまざまな地域から石材を輸入することが可能になり、建築に多様性が生まれた。
例2
Cromwell, who led the Puritan revolution, was notorious for about a century after his death, being called a hypocrite and so on. In the 19th century, however, he gained a heroic reputation.
訳 ピューリタン革命を率いたクロムウェルは、死後約100年間は偽善者などと呼ばれ、悪名を馳せた。しかし、19世紀には英雄としての評判を得た。
分詞構文は、新聞などフォーマルな英語の文章でよく使われます。
コンマの後に簡単に文を続けることができるので便利です。
このような表現に出会うと、英語らしい文章という感じがします。
歯切れよい短文を重ねていく文体の人はあまり使わないかもしれませんが。
同時並行や分詞構文を詳しく説明した記事です。
文末に関係詞節を追加
例1
When he went upstairs, he accidentally dropped his tea bottle in the middle of the stairs. This was because he was trying to carry too many things at the same time, which was his habit.
訳 2階に上がったとき、彼は誤って階段の途中でお茶のペットボトルを落としてしまった。同時に多くのものを運ぼうとしたためで、それが彼の癖だった。
この例文では継続用法の関係詞が追加されています。
同時に多くのものを運ぶことは「彼の癖である」と説明しています。
例2
When we talk about a revolution, we can’t ignore the fact that the hunter-gatherer economy changed to a production economy. This is known as the food production revolution, which I think is an incredibly big transition for humanity.
例 革命を語るとき、狩猟採集の経済が生産する経済へと変化した事実を無視できない。これは食料生産革命として知られており、私はこれは人類にとって信じがたいほどの大転換期だと思う。
この例文でも同様に、追加情報があります。
「自分にとっては〇〇と思われる」という内容をつけ加えています。
関係詞を使うと文が長くなりがちですが、文章ではむしろ自然に溶け込むことが多いです。
ただこれも、短文で区切っていく文体の人はあまり使わないかもしれません。
継続用法の関係詞の使い方は、こちらの記事に。
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まとめ
長文の英作文で使える表現技法を見てきました。
ふさわしい場面で効果的に使えると好印象を与えることができます。
技法もワンパターンになるとつまらなくなりますので、注意しましょう。
また、原則的に英文の場合は主語を明確して、Yes, No もはっきり示しましょう。
さらに勉強したいあなたのために、信頼できる英語ライティングの本を紹介します。著者はアメリカで新聞記者だった人で、この本はNHKテキストの連載に、新たな書下ろしを加えて作られています。
