今回のテーマ:it の構文
- 形式主語・形式目的語、時間・天候の表現、強調構文などで、代名詞 it が出てきます。
- この記事では it を使った構文を扱います。
- 形式主語と強調構文の区別も説明します。正確に理解しましょう。
it の構文の種類
it の普通の使い方は、既出の語・句・節を指して「それ」と言う場合です。
ここでは、その用い方とは異なる場合を見ていきます。
- 形式主語や形式目的語として使う。
- 時間・天候・距離・明暗を表す。
- かかる時間や費用を表す。
- 強調構文を組み立てる。
どれも文法的に重要な事柄です。
形式主語(仮主語)の it
その存在理由
主語の位置に it を置き、本当の主語(真主語)を後ろに置くことがあります。
不定詞の句(動名詞の句)や that 節(wh 節のこともある)が主語として使われる場合などです。
これを形式主語(仮主語)といいます。
そうする理由は、主語(S)が長い、頭でっかちの文にしないためです。
仮の主語を置き、本当の主語を文の後ろに持ってくるイメージです。
to不定詞が真主語
It’s necessary for us to work together.
訳 私たちにとって、協力することは必要です。(私たちが協力することは必要です)
to 不定詞の前に for ~ を加えると「~にとって」の意味になります。
It was kind of him to give me a hand in such a situation.
訳 そんな状況で私に手を差し伸べてくれて、彼は親切でした。
前述の for が of になる場合があります。 kind が him の性質を表しているためです。
that節が真主語
簡単な文
It follows that that conclusion is true.
訳 したがって、その結論は真実です。
It seems that this process is essential to success.
訳 このプロセスは成功に不可欠のようです。
It occurred to me that something was happening.
訳 何かが起きていると思いました。
It’s no wonder that she can dance well.
訳 彼女が上手に踊れるのも不思議ではありません。
やや難しめの文
It often happens that trains don’t arrive on time here in the U.S.
訳 ここアメリカでは、電車が時間通りに到着しないことがよくあります。
It is regrettable that a lot of mistakes were found in your essay.
訳 あなたのエッセイに多くの間違いが見つかったのは残念です。
It goes without saying that such reports are suitable for publication.
訳 言うまでもなく、そのような報告は公表に適している。
動名詞が真主語
it が動名詞を受ける場合です。
It’s no use trying to persuade him.
訳 彼を説得しようとしても無駄です。
Is it exciting sliding down a steep slope?
訳 急斜面を滑り降りるのはワクワクするだろうか?
wh節が真主語
it が wh 節を受ける場合です。
It doesn’t matter whether you stay there or not.
訳 あなたがそこに留まるかどうかは、関係ありません。
It makes no difference whether ~ と言い換えられます。
It is unclear who put this bill on the school wall.
訳 誰がこのビラを学校の壁に貼ったのかは不明である。
所要時間・費用と形式主語
所要時間や費用を表したいとき、以下の形式主語の構文を使えます。
take を使う
It took me a long time to assemble the bookshelf.
訳 本棚を組み立てるのに長い時間がかかりました。
Does it take a long time to ferment soybeans?
訳 大豆を発酵させるには時間がかかるのですか?
cost を使う
It cost me twenty dollars to buy books online.
訳 オンラインで本を買うのに20ドルかかった。
It must cost us strength to cut grass from such a large area.
訳 これだけの面積の草を刈るには、体力を消耗するはずだ。
この例は費用というより、体力を「失わせる」の意味です。
形式目的語の it
第五文型 SVOC で、目的語として不定詞の句や that 節が使われるときがあります。
その場合、it を形式的に目的語の位置に置いて、真の目的語を補語の後ろに置くことがあります。
これを形式目的語といいます。
that節が真の目的語
I think it a pity that we wasted a lot of time.
訳 私たちが多くの時間を無駄にしたのは、残念だと思います。
Do you take it for granted that she loves you?
訳 彼女があなたを愛していることを、当たり前だと思っていますか?
Please see to it that this will be completed by the end of this month.
訳 これは今月末までに完成するように、取り計らってください。
これは第五文型ではなく、前置詞の後に接続詞 that が来れないため、it を入れています。
to不定詞が真の目的語
He found it easy to understand what local people said.
訳 彼は、地元の人々が言うことを理解するのが簡単なことに気づきました。
時間・天候・距離・明暗と it
時間・天候・距離・明暗を表すとき、意味を持たない it を主語にして文を組み立てます。
時間
It has been twenty years since we met at the university.
訳 私たちが大学で出会ってから、20年になります。
It was not long before she arrived here.
訳 彼女がここに到着するのに、そう長くはかからなかった。
天候
It’s so sunny that everything looks shining.
訳 とても晴れているので、すべてが輝いているように見えます。
It was raining heavily and the road became a river.
訳 大雨が降っていて、道路は川になった。
天気の英語表現については、こちらの記事を。
距離
It was two kilometers from my office.
訳 私のオフィスから2キロです。
明暗
We have to get back to the hotel because it’s getting dark.
訳 暗くなってきたから、ホテルに戻らないと。
漠たる状況
How’s it going?
訳 調子はどうですか?
これは漠然とした状況を表す it です。
強調構文の it
強調部分を前に
it は強調構文を組み立てるのにも使います。
that 以下のなかの強調したい部分が it is (was)の次に続きます。
It is that cake that I have been looking for.
訳 私が探していたのは、そのケーキです。
It was not until the deadline was approaching that he hit on an idea.
訳 締め切りが迫ってきてはじめて、彼はアイデアを思いついた。
形式主語との違い
強調構文が形式主語と違うところは、that 以下の文の一部が前に出てきていることです。
形式主語の場合は、 that 節の中身は完全な形式を備えた文になります。
強調構文は、こちらの記事でも触れています。
豆知識
状況に依存する…
It depends.
意味 時と場合による。
「一概には言えない」「ケースバイケース」みたいな状況です。
あとに名詞を続けるときは、前置詞は on です。
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まとめ
英単語のなかには、きわめて使用頻度の高い、万能ワードがあります。
今回取り上げた it は、その典型です。it の構文を練習する価値は十分にあります。
形式主語や形式目的語は他の言葉と結びついて定型表現になるものも多いです。
会話でも使ってみてください。
一般向けの構文集として、基本構文をコンパクトにまとめた一冊があります。300の英文が12のトピックに無駄なくまとめられています。「it の構文」もあります。著者は駿台の講師歴が長いベテランです。