今回のテーマ:倒置法
- 英文のなかに、たまに見慣れない言葉の配置を見かけます。
- この記事では英語の倒置法が生じる理由や、語順、訳し方を例文で示します。
- 難易度の高い英文読解では、倒置の知識が必要です。パターンを整理しましょう。
英語の倒置法の基本
倒置が生じる理由
英語は日本語と比べて、文の構造にしっかりとしたパターンがあります。
言い換えると、語順のルールがきちっとしています。
次の文はふつうの語順ですね。
The river was long and deep.
訳 その川は長く深かった。
ところが、語順を変化させる場合があります。これが「倒置」です。
Long and deep was the river.
訳 長く深かった。その川は。
倒置が生じるのには、次のような理由があります。
- 強調したい言葉を文の最初に置いて、感情を込める(普通はこのパターンが多い)
- わざと文末に重要な情報を回す
- 文に勢いやリズムをつける、あるいはバランスを保つために語順を変える
倒置は、やみくもに語順を変えているのではありません。何らかの表現上の意図があるのです。
具体的な語順
倒置の仕方はいくつかパターンがあり、一つには決まりません。
- 助動詞が登場し、疑問文と同じ語順が生じることもあります。
- 主語と動詞の位置が入れ替わるものもあります。
- 仮定法では、倒置が起きるとともに if という語が消えます。
(それぞれの具体例をこの記事で紹介しています)
疑問文の語順は、次の記事にまとめました。
否定語や副詞が文頭に
否定的意味の副詞的要素が文頭に出て、その後が疑問文と同じ語順になることも多いです。
後で例文を挙げて詳述します。
否定語の種類を学びたい人は、次の記事を参考にしてください。
倒置で文頭に出る副詞
否定の副詞
否定の意味の副詞が文の先頭に出ると、その後は疑問文と同じ語順になります。
Never have I seen such a strange fellow.
訳 こんな不思議な奴を見たことがない。
Little did I know about the residents living in the next room.
訳 隣の部屋に住んでいる住人のことを私はほとんど知らなかった。
Hardly had she tweeted when she got a lot of reaction.
訳 彼女がツイートするとすぐ、多くの反応を得た。
At no time did my father complain about something to my mother.
訳 父は母に何かについて不平を言うことはありませんでした。
否定語と副詞
not のような否定語と副詞が文の先頭に出ると、その後は疑問文と同じ語順になります。
Not until Thursday did he finish the report.
訳 彼は木曜日になって初めて報告書を完成させた。
直訳すれば「~まで~しない」ですが、「~してはじめて~する」の意味になります。
Not once did I forget to lock the door at night.
訳 夜、ドアの鍵を閉め忘れたことは一度もない。
only を含む副詞
only も否定語と同じように、文の先頭に置かれると疑問文の語順のような倒置が生じます。
Only if you register for membership can you use this service.
訳 会員登録をした場合のみ、本サービスをご利用いただけます。
Only when the sun is shining does my grandma go for a walk.
訳 おばあちゃんが散歩に行くのは、太陽が照っているときだけだ。
方向や場所の副詞
方向や場所を表す副詞が文の先頭に出ると、主語と動詞の位置が入れ替わります。
Up into the sky rose the balloons.
訳 空に舞い上がったのは風船でした。
Here comes the school bus.
訳 ほら、スクールバスがやってきた。
To the hospital he went.
訳 病院に彼は行きました。
he のような代名詞では主語と動詞の倒置が起きません。
程度の副詞
否定語でなくても、程度を表す副詞が文の先頭に出ると、その後は疑問文と同じ語順になります。
Well do I remember what she said in a cabin.
訳 小屋の中で彼女が言ったことをよく覚えている。
So excited did I feel that I jumped into the river.
訳 私はとても興奮していたので川に飛び込みました。
so ~ that の構文の倒置。
その他の倒置
補語の倒置
形容詞の場合
補語になった形容詞が文の先頭に出ると、その後は主語と動詞が入れ替わります。
Brave was the man who first helped the victims.
訳 被災者を最初に助けたのは勇敢な人だった。
Such was his honesty that he has never flattered anyone.
訳 彼は正直で、誰にも媚びたことがない。
現在分詞・過去分詞の場合
現在分詞・過去分詞も文頭に置かれることがあります。
Digging a hole was a dark brown mole.
訳 穴を掘っていたのは、こげ茶色のモグラだった。
Delivered to my house were several boxes of vegetables.
訳 私の家に届けられたのはいくつもの野菜の箱だった。
否定語つき目的語の倒置
no などの否定語がついた目的語が文の先頭に出ると、その後は疑問文と同じ語順になります。
No one could I see in the city hall under repair.
訳 修復中の市庁舎には誰一人いなかった。
No money did I have when she asked me to lend 10 dollars.
訳 彼女が10ドル貸してくれと言ったとき、私はお金を持っていませんでした。
not only A but also B の倒置
文の先頭に not only が置かれると、その後は疑問文と同じ語順になります。
Not only did she eat ice cream, she also ate two pancakes.
訳 彼女はアイスクリームだけでなく、パンケーキも2枚食べた。
but や also は省略されることもあるみたいです。
Not only do they deliver a new air conditioner but they also install it.
訳 彼らは新しいエアコンを届けるだけでなく、設置もしてくれる。
同意文の倒置
先に述べた肯定文や否定文に同意を示す場合、語順の変化が起きます。
I was absent from the ceremony last week. - So did I.
訳 先週の式は欠席しました。私もそうでした。
肯定文に同意を示す場合、「so + (助)動詞 + 主語」の語順。
I was not able to open the safe. - Neither did I.
訳 金庫を開けられなかった。私もそうでした。
否定文に同意を示す場合、「neither + (助)動詞 + 主語」の語順。
仮定法の倒置
仮定法で if を使わずに、倒置を使って表す言い方があります。
Had I canceled my appointment, they could get back home earlier.
訳 私が予約をキャンセルしていれば、彼らは早く帰宅できただろう。
Should you have any questions, please feel free to contact us.
訳 ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
There is(are)構文
There is(are)構文も倒置の形態と言うことができます。
There are eight branches in the Tokyo area.
訳 東京近郊には8つの支店があります。
There were a couple of sample sentences in the book.
訳 本にはいくつかの例文が載っていた。
There seems to be something happy about her.
訳 彼女には幸せな何かがあるように思える。
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まとめ
英語の倒置法の具体例を見てきました。
副詞・形容詞・名詞が文頭に出る場合や、その他の場合など、いくつか種類がありました。
はじめは戸惑うかもしれません。スムーズに読めるまで慣れてください。
さらに勉強したいあなたのために、省略や倒置などの複雑な文を読み解く本を紹介します。場所句倒置文というものが詳しく解説されています。著者は大学教授です。