今回のテーマ:コミュニケーション
- ふだん何気なく行っている「会話」ですが、考えてみると奥が深いです。
- この記事は「会話」を臨床心理学・異文化理解の観点から考察した文章です。
- 会話の原則や障害のあり方に関心のある人に読んでいただけると嬉しいです。
英会話を楽しむ
このブログでは英会話に役立つ表現を紹介しています。
英語を話すのは楽しいです。そして生活や仕事に役に立ちます。
会話はふつう言葉を用いて行われます。
言葉の重要性を示したことわざもあります。
The pen is mightier than the sword.(ペンは剣よりも強し)。
もっとも、Actions speak louder than words.(行動は言葉よりも雄弁)ともいわれますが。
外国人と言葉が通じるのは、面白いです。
今まで知らなかった世界とつながれます。新しいものの見方を知ることができます。
英会話ではふつう、楽しい話題やみんなと共有できる話題が好まれます。
英会話が成立するためには、ある程度のラインまで勉強しなければなりません。
漠然と取り組むのではなく、方針を明確にして継続する必要があります。
どんな分野でもそうかもしれませんが、英語学習では基本を繰り返し学ぶことが重要です。
高度な表現も読み書きには役に立ちます。
しかし、会話ではわかりやすい表現を身につけてテンポよく話すのがいいと思うのです。
挨拶、あいづち、感謝、謝罪、称賛、ねぎらい、依頼の仕方などは、最初に覚えるとよい表現です。
最初はこれらだけでかなりうまくいきます。
会話の土台は、こういうところにあるんですね。
たとえば、依頼と感謝の短い表現をセットで覚える方法などは、きわめて実践的です。
その次は、ある程度長い文を用いた説明の仕方や感情の表し方を覚えるのもいいでしょう。
ところで、英会話は English conversation または conversation in English と表されます。
「人と人とが話すこと」を表す場合、英語では dialogue と conversation という単語があります。
それぞれ「対話」「会話」と訳されます。
どんな違いがあるのでしょう? 以下の引用では、厳密に言うと違いがあると書いてあります。
Dialogue and Conversation are two words that are used in the same sense. Strictly speaking, they should be used in different senses. They are two words that carry different connotations for that matter.
The word ‘dialogue’ is used in the sense of ‘discussion’. On the other hand, the word ‘conversation’ is used in the sense of ‘exchange of ideas’. This is the subtle and main difference between the two words.
differencebetween.com
今回は英会話の根底にある人間の会話の性質について考察してみましょう。
会話の基本的性質
会話の構成要素
時間を浪費する会話もあれば、必要な会話もあります。
後味のわるい会話もあれば、愉快な会話もあります。
そもそも、会話とは何でしょうか?
一対一の対面の会話が、会話の基本であると考えられます。
会話の体験は、頭を働かせる作業ですが、呼吸や歌唱、体操にも似ています。
ことばを発声することは、感情を伴った、生き物らしい身体的運動です。
たとえば、声量の程度により、身体的な健康状態を推測することもある程度可能ですね。
(もっとも、怒りの感情の高まり、聴力に難のある高齢者との会話などでも声量は大きくなります)
表現の仕方には、お互いの関係性や環境というコンテキストが反映されます。
たいてい会話をするときは、相手との仲や上下関係をふまえて、使う言葉の丁寧さを調節します。
相手との物理的距離や声の大きさもそれらに応じて変化します。
部屋の大きさや周囲の人の状況などの要因によっても会話の仕方は変わります。
会話には構造があり、文化ごとに決まった始め方と終わり方の作法があることが多いです。
また、会話は一方通行ではなく、キャッチボールの比喩のように、相互的なやりとりです。
相手が話しているときは待って聞きます。相手が話し終えたときは、自分が話します。
表情や身振りを含めた相手の反応を正しく受け取り、脱線しないように話す内容を発展させます。
ときに言外の意図やイメージを推し量れる想像力も必要になります。そこに笑いや文学が生じます。
相手が話す内容も、いつもストレートに受け取れるとはかぎらないですよね。
その想像力の根拠として重要なのは、非言語的なメッセージです。
顔つき・視線の交わし方・声の調子・姿勢・動作などがそうです。
それは、語られた言葉の内容よりも、真実なものとして受け取られることが多いです。
そこにさまざまな本音が濃密に凝縮されている場合もあります。
目的別に見た会話
目的別に見た会話の発展形としては、以下のようなものなどがあります。
- エンタメとしての会話(友人とのおしゃべり、トーク番組、漫才など)
- 接客技術としての会話(フォーマルな話し方のマナー、セールストーク、交渉術など)
- 指導・援助のための会話(説得術、学習指導法、カウンセリングなど)
- 伝達・議論のための会話(ミーティング、ディベートなど)
対面しない会話もある
対面の会話以外で重要なものは 2 つあります。
オンラインの会話
まず、直接面会せず、必ずしも時間と空間を共有することのないオンラインでの会話もあります。
メールやチャット、SNSのやりとりなどがその典型例です。
現代では必要不可欠な道具になってきています。
遠隔コミュニケーションを手軽に行うことができ、便利で楽しい側面も多いです。
交通費も移動時間も節約でき、海外の人ともつながれます。
しかし、そこでは営利主義的な詐欺や注目集めの感情論なども増加しています。
また、他者との比較により劣等感を生じたり、時間を浪費する側面もあります。
そして、視聴覚のみの情報に限定され、他の感覚が不在である事実も特筆すべきことです。
オンラインの会話では会話の構成要素のいくつかが、制限されるか、あるいは欠如しています。
ただ、情報の手がかりが少ないオンラインの会話のほうが居心地よく感じる人もいます。
自己内の会話
また、自己内の会話と見なされるものもあります。
私たちの心のなかでは、思考および感情の言語化の営みがあります。
相手の受けとめ方を予想して伝え方を頭のなかで吟味する行為などもあります。
それらは言語を用いた自分との対話ととらえることが可能です。
私が専門とする心理療法では、このプロセスも重要なものとなります。
会話が困難になるとき
会話の崩れ
言い間違いや聞き間違い、言い直しや聞き直しなども、会話にはつきものです。
言葉足らずや省略、繰り返しや無駄、理解のずれなどもあります。
それで不都合が起きることもあります。
しかし、それらが多少あるがゆえにリアルな会話らしいともいえます。
神経症的な人は、ささいな言い損ないや、相手の受けとめ方を過剰に心配するかもしれません。
情緒的わだかまりから、言葉を実際以上に被害的にとらえ、反撃的になるかもしれません。
アルコールによる酩酊が進むと、多弁・粗野になり、また朦朧として会話が成立しなくなります。
表現する苦しさ
自分の思いをぴったりの言葉で表現できると嬉しいものです。
語彙が乏しいと、英会話でほんとうの思いを表せない苦しみを感じます。
子どもや言語理解(VCI)に課題を持つ人も表現の苦悩を感じます。
外国語学習は、そういう人たちの自己表現の困難さを追体験する機会にもなります。
言語理解(Verbal Comprehension Index: VCI)
ウェクスラー式の知能検査で数値的に測定される指標の一つです。
言語で考える力や、その理解力や表現力、習得した知識などを示します。
会話の病理
会話に影響する障害
もっと困難の大きい障害もあります。いくつか例をあげます。
自閉スペクトラム症では、気持ちの交流が難しく、不測の事態や情報量の多さに弱いです。
注意欠如多動症では、相手の話に割り込んだり、話がころころ変化したりしがちです。
統合失調症では、「言葉のサラダ」の現象から、まとまりがなく意味が取れないことがあります。
失語症では、言葉が出ない、間違った言葉が出る、言葉が不適切に反復されることがあります。
認知症では、代名詞の多さ、聞き取りにくさや忘却、複雑な内容の理解困難が見られます。
支援が必要な人もいる
会話がスムーズにいかないとき、原因の特定がときとして難しいケースもあります。
相手のほうに原因があるのか、経験や練習の不足が原因なのか。
緊張や疲労が原因なのか、何らかの精神障害があるのか。
安易に障害のせいにしてはいけないのは当然です。
しかし、ほんとうに障害のある人が見逃されることもあってはならないことです。
支援が必要と思う人はくれぐれも安易に自己判断はせず、必ず専門医にご相談ください。
意思疎通が思うようにいかない生活は、たいへん苦労が多いと想像されます。
精神障害により会話に困難をきたしている人々すべてに、必要な支援が届くことを切に願います。
異文化の不可解さに挑む
精神障害的な問題とは別に、異文化コミュニケーション特有の困難さもあります。
異なる文化的背景にある人々は、同じことを違う表現であらわすことも多いです。
また、同一の表現に対する解釈の仕方も変化してきます。
文化特有の表現・解釈の仕方があります。それが次の世代に継承されていくのです。
人間の認知や感情に生得的かつ普遍的な基礎があるにしても、そうなのです。
文化特有の表現・解釈の仕方は、その文化のなかの人には必ずしも意識化されません。
外国語学習では、文化的な慣習を自覚的に体系として学ぶ必要性が出てきます。
たとえば、日本人が英文法を一通り学ぶ必要があるのは、こういう事情からでしょう。
参考文献
大橋理枝・根橋玲子(2019) コミュニケーション学入門 放送大学教育振興会
藤野博(2023) 自閉症のある子どもへの言語・コミュニケーションの指導と支援 明治図書
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まとめ
英会話がうまくいかないとき、原因を考えます。
英語力の問題なのか、コミュニケーション能力の問題なのかわからないと語る人もいます。
たんに英語の練習不足の場合もあるでしょう。国語力も基礎になります。
世の中には、基本的な意思疎通に困難を抱えている人がいる事実を知ることも大切です。
そのような人にとっては、会話が重荷と感じられることがあります。周囲の理解も必要ですね。
広い意味での英語学習は、ふだんのコミュニケーションのあり方を考えることも含まれます。